はじめに

ご両親やご兄弟等、大切な身内が亡くなったとき、とても悲しい気持ちになるのは当然のことですが、葬儀の段取りや入院中に発生した未払治療費の支払い、年金受給停止や介護保険資格喪失の手続き等、やらなければならない諸手続きも多数あり、悲しみに暮れているばかりではいられないのも現実です。

それに加えて、故人が遺した遺産について相続人間で揉めるようなことになれば、悲しみだけでなく憎悪の感情まで生じることになり、さらに悲しく大変な思いをすることになるでしょう。

ここでは、相続の局面において、できるだけ悲しい思いや大変な思いをすることがないよう、またそういった思いを可能な限り軽減するためにはどうすべきかを、遺産を遺す被相続人側と遺産を引き継ぐ相続人側とに分けて、簡単にご紹介します。

 

遺言のすすめ(被相続人側)

遺言と聞くと、「自分にはそんな大した財産はないから…」とか「私はまだまだ死んだりしないから…」とか「うちの家族は仲がいいから…」等と言って、自分にはあまり関係のない事柄のように感じる方が多いのではないでしょうか。

しかし、現実には、その大したことのない財産のために、それまで仲がよかった(ように見えていた)相続人間で骨肉の争いが生じることも往々にしてあるのです。むしろ、それほど多くの遺産がない場合のほうが相続人間で揉めることが多いようにすら感じます。自分が良かれと思って遺した財産が元で、相続人間で争いが生じるのは、被相続人としても本望ではないでしょう。

また、人の死は不慮の事故や急性心不全等により突然に訪れることも多々あります。遺言は、一度作成したとしても何度でも書き直すことができますので、作成するのに早すぎるということはありません。

相続人間で揉めるようなことはしないで欲しい、自分の遺産の分配や使い道をあらかじめ決めておきたいという場合は、遺言を作成しておくことこそが最も有効な手段なのです。

遺言の方式には、主に自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は、遺言者自身が自筆で遺言内容を記し、署名押印する方式です。筆跡こそが重要となりますのでパソコンやワープロで作成することはできません。いつでもどこでも好きなときに作成することができる上に費用も掛からない反面、法定の方式を満たしていなければ遺言が無効となってしまいますし、保管も自分自身もしくは個人的な知人や友人がすることとなるので紛失や発見されない等のリスクもあります。

一方、公正証書遺言は、公証人役場に行って、公証人の面前で遺言内容を口授し、公証人に遺言書を作成してもらう方式です。費用が掛かったり、証人2名が必要となりますが、法定の方式を満たさず無効になってしまうことはありませんし、遺言書は公証人役場で保管されることとなりますから紛失等のリスクもありません。

遺言は、人生最後の意思表示というとても大切な行為ですから、極力間違いのないように作成したいものです。ですので、当事務所では、基本的に公正証書遺言の方式をお勧めしています。

遺産分割手続きについて(相続人側)

相続が開始すると、相続人間でどのように遺産を分けるか協議することとなります。これを遺産分割協議といいますが、この手続きが正確に行われている例は、弁護士が関与しない場合では少ないように思います。

本来、遺産分割協議は、相続人及び相続分の確定、積極財産及び消極財産(負債等のこと)の確定がきちんとなされた上で行われるべきものです。しかし、例えば、父親が亡くなり相続人がその子供3人(長男、長女、次男)というケースにおいて、仮に長男夫婦が父親の世話をずっとしていたというような場合には、長男が他の兄弟に対して一方的に書類にハンコを押してくれと頼んで、他の兄弟もそんなものかとそれに応じるという、謂わばなあなあに遺産分割協議が済まされることも往々にしてあります。

もちろん、他の相続人からすれば、真にそれで納得しているのであれば別段それで問題はありません。しかし、例えば、他の相続人が知らなかった財産が後日に発覚した場合や、父親の生前にその財産を長男が使い込んでいたことが判明したというようなケースもあり、他の相続人がそれを取り戻そうと長男に対して請求したりして、後に紛争となることも少なくありません。長男としては、他の相続人に対してもうハンコを押したのだから今さらそんなこと言われても困ると主張するでしょうし、他の相続人からすればハンコを押すときにはそんな話は知らなかったと主張するでしょう。そして、話がまとまらずに、最悪訴訟沙汰に発展することになることもあります。

ここに挙げた例は、決して極端な例ではなく、実際に当事務所でもご相談をよく受けるケースです。訴訟沙汰になってしまえば兄弟仲の亀裂も深刻なものとなってしまうでしょうし、そのようなことを父親が望んでいたはずもありません。きちんと協議の段階から遺産を明らかにしておけば、後日紛争になることもなかったのです。

このように相続人間で遺産を巡って紛争となることを俗に「争続」などと表現したりしますが、できる限りそのような事態には陥りたくないものです。

そのためには、始めからきちんと財産の確定等をしたうえで、遺産分割協議をすべきです。場合によっては任意の話し合いではまとまらずに、調停や審判といった裁判手続きによることになることもありますが、それでも一度よく分からないままハンコを押して後から紛争になるケースに比べれば、相続人間に入る亀裂も幾分小さいでしょう。何より、後から遺産分割協議を覆すことは極めて困難ですから、やはり始めからきちんとした手順で協議をしておくべきだといえます。

弁護士に依頼するメリット

遺言書作成の場面においては、自筆証書遺言でも、内容形式両面において遺言者の意思が正確に反映された物を作成することが可能となります。

またそのまま弁護士を遺言執行者に指名しておくこともできますから、万一亡くなった場合には速やかな遺言執行が期待できます。

公正証書遺言作成においても、公証人との事前打ち合わせが必要となるのですが、弁護士であれば適切にそのサポートをすることができます。また、公証人であっても、どの財産をどの相続人に相続させるべきか等、遺言の具体的な内容については何ら助言してくれません。しかし、弁護士であれば、遺言者の意思を適切に反映した遺言になるようにその内容を検討し助言することができます。

また、遺産分割協議においては、前提として財産調査が必要であったり、いざ協議の局面においても特別受益や寄与分等様々な考慮されるべき要素があります。弁護士に依頼すれば、あなたの主張が通るのかどうか、他の相続人がする様々な主張が正しいのか正しくないのか、一般論ではなくあなた自身の相続関係に基づいて具体的に助言をすることができ、あなたの権利を守ることができます。

 

なかしま法律事務所では初回相談無料

なかしま法律事務所では、随時無料相談を受け付けています。

兄弟から遺産分割協議書にハンコを押してほしいと言われた、遺言書を作成したい、遺言書を作成しておいたほうがよいのか等々、相続の分野には悩みが尽きません。

ハンコを押してからでは手遅れになる可能性が大きくなります。亡くなってからでは遺言書は作成できません。

そもそも弁護士に相談すべきことか分からないといったことでも、とりあえず無料ですので、お気軽にご相談ください。